誹謗中傷は悪なのだろうかと昔から思っていた話
7年前に放送された日本テレビドラマ『3年A組 ー今から皆さんは、人質ですー』の最終回、菅田将暉演じる柊一颯の台詞にこんなものがある。
自分の親や友だちに面と向かって言えないことを見ず知らずの他人にぶつけるなよ。お前のストレスの発散で他人の心をえぐるなよ、分かるだろ、俺の言いたいこと、お前らそこまで馬鹿じゃないだろ!
(中略)
右に習って吐いた何気ない一言が、相手を深く傷つけるかもしれない、1人よがりに偏った正義感が束になることでいとも簡単に人の命を奪えるかもしれないってことを。そこにいる君に、これを見ているあなたに!一人ひとりの胸に刻んで欲しいんだよ。他人に同調するより、他人をけなすより、まずは自分を律して磨いて作っていくことの方が大切なんじゃないのか?てかそっちの方が楽しいだろ!?
(中略)
その目も口も手も!誰かを傷つけるためにあるわけじゃない!誰かと喜びを分かち合うために、誰かと幸せを噛みしめるためにあるんじゃないのか!?
劇中のSNS「マインドボイス」の、顔も見えぬユーザー達に向け柊がぶつけた叫びである。
当時この台詞は話題を呼び、マインドボイスのモチーフであろうTwitterでトレンドを席巻していた。感動したという声で溢れていた。
自分は7年前このドラマを見ていて、「賛同できないなあ」と思っていた。
柊の言葉には魂がこもっていた。内容も正論だと思う。
だが、申し訳ないが柊はやや綺麗事に傾きすぎで、性善説に期待しすぎである。
世の中、そんな風にモラルを持ったユーザーでSNSが溢れる事は永劫にない。
そうなるとしたらとっくに過疎ったオワコンSNSである。
SNSが現代人にとって不可欠なものになり、その利用者(=母数)が膨大なものになっていく流れを止められない以上、モラルを持った人口とそれを持たぬ人口は同じ割合で増え続ける。
そんなジャガーノートに対し、声を上げることなど無駄とまでは言わないがもっと別の方法を提案した方が生産的だろう、と7年前の自分はドラマを見ながら思っていた。
柊のこの叫びの原点となった景山澪奈の悲劇はフェイク動画という嘘っぱちで固められた理不尽な炎上が起点であるためそれについては柊の怒りはご尤もなのだが、世の中の全ての炎上に対してそれを言うか?
というか、TL全体を巻き込むレベルの大炎上って真偽が真の場合大体本当にそいつが悪い事が半数超えてないか?と思う。
もうこのご時世、炎上の渦中の人物はその真偽を数日のうちには何かしらの形で明らかにする。
「報道は概ね事実です。」とクロを認めたのち、特に著名人の場合「個人への誹謗・中傷といった行為はご遠慮いただけますと幸いです。」という虫の良い一言が付け加えられていることがやたらに多い。
最後のおまけで法的措置までチラつかせているもんならもはや長谷川亮太かよとため息が出る。
そもそも誹謗中傷喰らいたくないんだったらDM閉鎖すれば良いしリプだってFF以外できないように設定すりゃある程度自衛できんじゃん。
業界のことよく分からんのだがDMって閉鎖すると逆に仕事やりづらいとかあんの?
昔から疑問である。
というか特大のネタ(オカズ、燃料)を投下してしまった以上イジられまくるのは必至な訳で、それに対し「やめてください」とかもはや言わない方がマシであり、黙ってその話題にみんなが飽きるのを待つしかないのである。
だって言いたいじゃん悪口。
一番楽しいじゃん悪口。
自分だって誰かが裏垢と間違え表垢で失言したら少年Tの「おませさんですなぁ笑」のスクショを掘り返したくなるし、野球選手が女性関係でやらかすたびロッテ清田育宏のパズドラDMを掘り返さずにはいられない。
ここで改めて念を押しておくが、自分は全ての誹謗中傷を肯定したいわけではない。
自分が言いたいのは、極上のネタ(オカズ、燃料)が投下されたのに、その人物に「死ね」とか「消えろ」みたいな安直で面白くもなんともない悪口で攻撃するのはダサいし勿体ないぞ、という事である。
せっかくなんだからもっと頭捻って面白い言葉とかやり方でイジってやらないとその人も報われないし、なんならそういう扱い方して面白くなった方が結果ご本人も社会復帰に繋げやすいのではないだろうか。
和田豊が不倫をスッパ抜かれた後、球場で「俺にもチュッしてくれや~」とヤジを飛ばした虎党のセンスは称賛に値した。
昔音ゲーの有名なランカーが電車の無賃乗車でプロ契約を解除され大炎上した際、中国からのゲームファンがその現場の駅にわざわざ出向き「聖地巡礼」と題した動画をbilibiliに上げていてその行動力に唸った。
さきほど長谷川亮太という日本最大級の炎上で知られる男の名前を出した。
とても笑えぬ壮絶な事を数え切れないほど彼もされているが、「地方競馬の協賛レースで彼の書き込みをイジった冠レースを勝手に開催して盛り上がる」という試みは斬新で画期的だと思った。
だいぶ記憶が曖昧な所があるが、昔マツコ・デラックスが怒り新党かどっかで言っていた言葉が印象に残っている。
「2ちゃんねるって昔は悪口でもオシャレな悪口が多かった。今はただただ汚い悪口ばっかり」
2ちゃんねるがただただ汚い悪口で塗れていなかった時期があっただろうかとは思うが、言いたい事は分かる。
まだスマホが普及せずネット人口も限られていた時代、オシャレでセンスを感じさせる切り口の書き込みを確かに多く目にした。
その文化が廃れてしまったとは思わないが、ネット人口の爆発的増加に伴いそれを飲み込み霞ませるほどつまらぬ安直な悪口の濁流が止まらないようになってしまったとは思う。
シャレにならないラインは勿論超えてはいけない。
真偽の分からぬネタに飛びついてはならない。
それを見極められぬ者はセンスがない。
だが一定の、本当に踏み外してはならぬ一線を守った上で遊ぶ悪口にはむしろネットをより豊かに、楽しいものにしてくれるのではないだろうか。
どうせ悪口と誹謗中傷が止むことはない地獄絵図なのだから、まだこの心意気を抱いた地獄絵図の方がほんの少しだけマシではないだろうか。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
Let's think.
見る専が選ぶmaimai創作譜面アワード2025
新曲のJ-POP枠は3つくらいあるといいんだよね。だってさぁ、大型アプデなのにまたオタク向けのラインナップでパンピがかわいそうじゃん!
昔っから予々言ってますが太鼓のPunishmentとかTelecastic Fake Showみたいな運営の趣味だろ絶対みたいな掘り出し曲が年二くらい欲しいですね。
maimaiもカラスは真っ白とポップミュージックは僕のものを最後に(大昔)もうやらなくなってしまった気がします。ツユは知らん
再生回数等、商業的には難しいのでしょうが音ゲーでも「このバンド知らなかったけどめっちゃいい!」体験をまた覚えたいものです。
さて今回は「見る専が選ぶmaimai創作譜面アワード2025」です。
2025年内にYoutubeに投稿されたmaimaiの創作譜面の中から、特に選りすぐりの秀作を部門別に表彰する企画です。
自分はめっきり筐体で遊ぶ回数が減り、金も入れねえのに新曲の譜面にアンチ書き込みする頗る厄介な社会人音ゲーマーの成れの果てとなってしまいました。
そんな私が完全に独断で選んでおりますので、賞に名誉なぞ一切ございません。
予めご了承くださいまし。
【ゴキゲン譜面部門】
音ゲーもゲームなので、「楽しい」ことが正義です。
となるとやはり、ゴキゲンに何度も叩ける譜面は正義ですね。
自分の好きな本家maimaiのゴキゲン譜面は、レーイレーイ紫(シチミヘルツ)やビビデバ白(シチミヘルツ)、Never Give Up紫(7.3連発花火)です。
【優秀賞:カーテンコール / 優里(ND:Ragna様)】
新妻エイジの如く驚異的なペースで良作を更新し続けるRagna様の作品にはいつも楽しませて頂いております。特に昨年まで一年半毎日新作投稿されていた時期はよくこのクオリティで毎日持つなあと非常に感心しておりました。
Ragna様には二次創作らしい粗削りな部分が本当になく、素でそのまま商業作品として世に出せるじゃんけというレベルで譜面がまとまっており、しっかり曲の雰囲気に合っていてかつオリジナリティ溢れた配置で誘導も美しいという野生のプロのND様だと思っております。
特に12あたり低難易度の完成度は結構本気で公式に就職して欲しいレベル。
この曲でも全体的に12+のやりすぎない音取りながら、抑えめな序盤からサビで爆発させる緩急が完成されており、「今だカーテンコール さあ戦っていこう」でのスライドの折り方、「救うって 救うって」で片方のスライドは往復させる妙、そして最後「夢のなか~あ~→あ~↓」のケツの締まりも爽やかで気持ちいいです。
今年の作品ではありませんがStar!!、チョコレイト・ディスコ、アブストラクト・ナンセンスなども超おすすめです。
【最優秀賞:テレパシ / DECO*27(ND:にゃんぽす様)】
ゴキゲンな譜面も、ゴキゲンな曲から。
ゴキゲン相乗効果で今年最高にゴキゲンな創作譜面はこちらです。
曲のゴキゲンさは言わずもがな、曲の展開と合わせて譜面もしっかり各パートで違う雰囲気が作られており、最初から最後まで飽きさせないアイデアが溢れている見て楽しい遊んで楽しい譜面に仕上がった力作です。
ブギウギデビデビはタッチノーツで取らせて、ヒバナは譜面引用して、ラスサビ前は縦連で初見殺しして.....と最初に曲を聴いた時こんな譜面が出来そうと自分の頭の中で妄想していたネタがぜんぶ回収されていて初見時「そうだよね~~わかるぅ~!!!」と盛り上がっていました。僕は独身です。
【Re:MASTER譜面部門】
本家で収録されている(されていた)譜面を創作譜面で楽しさRe:フレッシュさせた作品を表彰する部門です。
自分の好きな本家リマスターはDragoon白(シチミヘルツ)です。
【優秀賞:Clattanoia / OxT(ND:みそかつ様)】
ハードロックど真ん中なんだからもっと暴れさせろやワレェ!!という本家で溜まったまま抱えていたムラムラを今年射精解消させてくれた作品です。
細かいところで本家MASTERのリスペクトを残しつつ、強化するところはしっかり強化されるともう気が狂う程気持ちがええんじゃ。
曲中ずっと忙しいですが無理はさせない配置でしっかり流れるように腕が運べるようできているのでまるで楽器を演奏するように、譜面に一心に集中するのではなく気持ちよく曲にノりながら叩ける良譜面。
「Where's my soul? Where's my heart?」の時間差イーチスライドと、「ただこの世界を生き抜こう」で流しの速度がどんどん上がっていくの特に好きです。
【最優秀賞:ハロ/ハワユ / ナノウ(ND:あいす様)】
本家MASTERで完成していると思っていたので、「リマスしかも14?」と最初サムネを見た時は正直期待薄でした。
自分は無理矢理難易度を上げたような譜面は創作でもあまり好かないからです。
ですが実際見てみて、たしかに難易度上げてるけど無理な音取りはなくて。
ふざけたような滅茶苦茶配置もなくて。
言葉にすると難しいけど、どうしてここでその配置を置いたのかが分かる。
まるで譜面がそのまま歌詞を自然と歌っているような、そんな不思議な作品でした。
【エモ譜面部門】
その名の通り、エモい譜面を表彰します。
エモい譜面というのは難しく、斬新で見たことないような配置はエキサイティングな感情を想起させてしまいエモくはないので新しい事はあまりできないのですがかといって陳腐すぎるとつまんないので塩梅が難しいところですね。
しかし本家でいうと約束(シチミヘルツ)やDROPS(シチミヘルツ)はこれといって斬新で大きく目立つ箇所はないですがエモく仕上がってるのですごいですよね。
【優秀賞:さよならアンドロメダ / 森久保乃々、渋谷凛、大和亜季(ND:長月様)】
もうイノタクの時点でどうしたってエモエモのエモですが、それを引き立たせるいい譜面をしています。
Aメロの自分語りパート(言い方最悪)は、密度はあれどノーツが隣接か2つ離れた間隔でほぼほぼ構成しており、2番から7番ボタン中心で1番8番ボタンにはあまりノーツを置かないことで塞ぎこんだような雰囲気を作り、サビ前の「ねえ こんばんは」から密度が落ち、長いゆっくりとした円周スライドを用いて緊張が少しずつ解れていくような、曲中の主人公とリンクさせる譜面の演出がとても巧みです。
サビは8分主体で歌詞の音を取り、このサビの特徴的なポイントである一拍音が消えるブレスのタイミングで静かにスライドを走らせる配置もとても素敵。
曲自体あまりに良いのですが、それをしっかり引き立てる素晴らしい譜面です。
【最優秀賞:動く、動く / チト、ユーリ(ND:みそかつ様)】
これまた曲だけで泣いてしまいそうになるほど曲が良いのですが、譜面の
「ここすき」ポイントが多すぎます。
・「軋む」のEACH直線スライドを流すタイミングと、4番5番EACHが飛んでくるタイミングの絶妙なわずかな間(←ここすき)
・「うれしいを多く」のEACHスライドで、片方にだけ巻き込みTAPが来る(←ここすき)
・色が混ざった「難解なパズルを解くように」の一筆書きスライド(←ここすき)
・「回る世界と逆向きで」の円周スライドが反時計回り(←ここすき)
・イントロでは青かったスライドが、アウトロは黄色で締まる(←ここすき)
はい優勝。
【新時代譜面部門】
新しいセンスを感じる、「今まで見たことがない!」と感じた新時代譜面を表彰します。
新時代譜面といえばシチミヘルツのLiftOffって譜(
【最優秀賞:Fighting My Way / 初星学園(ND:Sahelha様)】
FESTiVALスライドがマシマシだと新しい!!と脳死で感じてしまうとしたらそれは自分が時代に取り残されている証拠なのですが、それはそれとして咲季に似合う自信満々、堂々とした譜面でとても面白いです。
Sahelha様が明確な意識を持って置いたかはわかりませんが、たとえば「I just wanna I just wanna find somebody」の箇所、約5秒間を6つの同じ位置に来るタッチホールドだけで持たせています。
なかなか置くのに勇気がいる大胆な配置だと思いますが、いざ見せられるとこれしかない気がします。普通のホールドを1つずつ左にずらして置くみたいなことも出来たかもしれませんが、咲季を鼓舞する曲でそんな逃げの配置(?)は似合いませんね。
またサビの「恋に踊れ 情熱全て」も片手はロングスライド、もう片手は8分のTAPとシンプルな配置です。サビという見せ場でシンプルにキメているのに手抜きぽく見えないのもすごい。咲季の観る者を呑み込むキャラクター的な説得力と曲のパワーがこの配置の説得力を与えているようにも感じさせます。
また「行こう一番上まで」で1番にゆっくり上っていくスライドも憎いですね。見た時「おお」と声が出ました。これは「おお」だろ
アウトロの見たことがないウミユリ配置や、一番最後にも出てくる木琴?のような音を拾った折曲げスライドとタッチノーツも斬新で面白いです。
【ボス譜面部門】
創作譜面で自分が結構辛い評価をしてしまうのが14+以上のボス譜面です。
実力的に適正難易度を超えている事もあるのですが、どうも「これは面白い!」と思えるものより「さすがに独りよがりじゃないか」と思ってしまう事の方が多く...
まあ二次創作なので好きにやっていいものなんですけどねそもそも。好みの話。
【最優秀賞:MY GLORY WANTED!!! / R.B.P(ND:zAz様)】
KoP6thオンゲキ決勝課題曲ですね。
これだけ複雑な曲の音を丁寧に拾いきっているのがめちゃくちゃすごい。
しかもそこに譜面としての緩急があり、発狂もあり、休憩もあり、ラス殺しもあり、創作譜面だから好きに作っていいはずなのに「大会の為にある曲」の譜面というものを感じます。オンゲキの譜面がしっかりmaimaiの譜面として作り変えられ落とし込まれている文句なしの完成度です。
配置もとにかく忙しく難しいですがいわゆる宇宙配置のようなものがなく、体力と持久力が全てみたいな譜面をしているのが良いですね。
だって決勝課題曲で初見で出来る訳ない配置飛んできてもどうなの?って思っちゃうんですよ。それなら「夢へ食らいつけ」の歌詞通り、最後まで気持ちで負けなかった者が栄光を手にする譜面が決勝の課題曲であるべきだと思います。系ぎてとか言った奴殺す
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さて、maimai創作譜面アワード2025はいかがだったでしょうか。
また来年も、いい譜面がいっぱい見れたら幸せですね。
よろしければ自分の過去作も見てくださいな
ストレスのない謎を目指そう
最近色んな団体の謎解き公演とか、個人の謎解き企画に参加してよく思うことです。自分の中の整理用や戒めにも書いておく。
「導線」とは
制限時間が迫っているのにとある一つの謎が解けず詰まってしまった時、web謎とかで数十分以上同じ謎が解けず先に進めない時、イライラしますよね。ヒントキットに頼るのなんか変なプライドが邪魔するし。
自分みたいな端くれが代弁するのもおこがましいですが、こういう時、主に謎を作ったことがある経験がある人の多くは「もし自分が作り手だったらどこに謎を解くカギを隠すだろうか」という考え方をします。しているはず。たぶん。
この時、「もし自分が作り手だったらどうするだろう」で辿る糸を、謎解きではよく「導線」と呼びます。
導線とは、一つの謎に対して
①に気づくことができれば(or①をすることで)
②がわかって、
③答えがわかる
という、この①②③の一連の流れのことです。
謎を作る時、制作者には解く人のためにこういった導線をきちんと整備する責任があります。
導線がないというのは、たとえば何のヒントもなしに「ねえねえ昨日の夕ご飯何食べたと思うー?」と聞いてるようなものです。
聞かれた側からすれば「いや知らねーよ」としか言いようがありません。
問題としてもクソおもんないですね。
しかし、昨日の夕方その人に「私買い物してじゃがいもと人参と玉ねぎ買ったんだー」というヒントをあらかじめ撒いていたとすれば、これは先述した①を作っていることになるので、問題として成立します。
聞かれた側は「そういえば昨日じゃがいもと人参と玉ねぎ買った話をしていたな」ということを思い出すことができれば、「カレーかな?もしくは肉じゃが?さてまた野菜スープ?」と選択肢を思い浮かべることができます。
……謎解きは基本答えが一つに定まらないとダメなので、これはあくまで日常的な一例にすぎませんが、導線を作るというのは、一つの問題においてそれを解くための道しるべやヒントを設定するということなのです。
つまり、先ほど言ったわからない謎において導線を辿るというのは、「制作者が設定した謎を解くための隠れた道しるべを探す」という風に言い換えられます。無論この道しるべがあまりにわかりやすすぎると面白くないので、制作者はちょうどいいバランスを攻めます。導線を辿るというのは、犯人の匂いを覚えた警察犬が道を嗅ぎながら逃げた先を追うようなものということです。あれ違うかな?
主にこの導線を辿ることで解けるのは小謎と中謎です。
最近の謎解き公演において大謎はその導線を踏まえた上で、そこから更に一つ上の発想の転換や逆転、もしくは気づきが求められることが多いと感じます。小謎は一枚謎を沢山解くことで、中謎は警察犬的導線嗅覚を公演にたくさん行くことで鍛えることができると思っていますが…….自分はヒラメキにだいぶ苦手意識があるので、大謎は不得意です。
「ストレス」が公演の満足度を分ける
ちょっと話が逸れたので戻します。
謎が解けないとイライラするよねの話です。
大謎が解けない時は、たいてい解き手側の「一つ上の発想の転換や逆転と気づき」が足りていないことが多いです。しかし、小謎や中謎においては解いて先に進めたとしても「ちょっと不親切だなあ」と思うことが正直あります。それはゲームの構成だったり、小謎の画像や紙のデザインだったり、アイテムのUIだったり色々です。
そしてその多くは、制作者の導線の設計の甘さにあると個人的には思っています。いわば解く人のヒラメキが足りていないというより、そもそもヒラメかせるための道の道路工事がちゃんとできていない状態。
これは解く側からすればかなりの「ストレス」です。
謎解きとは、そもそも謎に対して解き手が考えてヒラメキでその壁を乗り越えるのが醍醐味のもの。しかし解き手が頭を使って考えるその対象が実は蕪雑な造りをしていて、壁を乗り越えた時の快感が少なければ、それは即ち謎解きの醍醐味そのものの消失を意味します。
そんな途中の「ストレス」を丸ごと全部吹き飛ばすエッッッグい大謎がその先待っているような革命的な神作であれば話は別ですが、残念ながら全部が全部そういう訳ではありません。主に、「良かったな~!」と「いまいちだったな」を分けるもの、言い換えれば「良作」と「凡作」を分けるものって、ポジティブな要素よりこういった「ストレス」のようなネガティブ要素の少なさで決まるんじゃないかという風に最近思います。
作り手も毎回100点満点の作品を世に出しているわけではありません。究極の100点満点を追い求めていたらいつまで経っても作品なんて完成しません。
そんな限られた時間の中でより品質の高い謎を、より満足度の高い謎を作るには、その公演ならではの面白さといったポジティブ要素を付け足すのも大事ですが、解き手の満足感を下げないよう謎の中の「ストレス」を極力そぎ落とすという作業を怠らないようにするのが物凄く大事だなあと思います。
謎解きとは違いますが、「暗殺教室」の作者でも知られる松井優征先生が漫画家の世界で非常に近いお話をされている記事があるので参照してみてください。記事の中で先生は「ストレスをそぎ落とす能力」のことを「防御力」とおっしゃっていますね。
「ハードル」と「ストレス」の区別
また謎解きの話に戻ります。
間違えてはいけないのが、漫画と違い謎解きはある程度のストレスを与えることを大前提として作るということ。頭を使って考えるというのはそれだけでかなりの労力なのです。でも、その先にあの醍醐味があるんですよね。我々を悩ませた謎というストレスが解けた時のあの快感を、これを読んでいる皆さんは全員ご存じのはずです。
解き手に「頭を使わせる」という相当なコストを支払わせながら、どうやってより質の高い謎解き体験を届けるか。
ここで最近自分の中でがよくやるのが、「解き手が越えるべきハードル」と「解き手に与えるストレス」を明確に区別して認識するという考え方です。
どういうことか、一枚謎を実例として説明します。
はい、謎クラはこれ(図1)だけで3文字の単語の答えを導けますね。
答えは「きあい」です。
五十音表の右上端を切り取っているので、当てはまるひらがなが「き」「あ」「い」と分かるからです。
しかし、謎解きにまだ触れたばっかりの昔の自分は一番最初にこういった五十音表切り抜き問題を見せられた時まったく解き筋がわからず、解説見ても「いや誰が分かんだよ」と結構イラっとしたのを覚えています。画像に五十音表全体が表示されているのならまだしも、右上端だけって。正方形が幾つか列で並んでるようにしか見えねえしそっから連想できるかよ、と。
一般の人からすれば五十音表なんて小1で手放したら次出会うの自分の子供が生まれた時ですからね。もしこれだけで初見ですぐ解けるような人がいたら相当だと思います。流石に今の自分はもう見慣れたので何とも思いませんが…
さて、この謎を解くために脳内で行われた処理の手順を文章にするとこうです。
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正方形の列の外枠が太い、そして左と下には列の続きがあるのに右にはないので五十音表の右端だと気づく(※ハードル)
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矢印が通る順番にその位置に入る五十音表のひらがなを順に読む
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「きあい」と読めることから、それが答えだと分かる
この小謎で設定している解き手が気づかなくてはいけないことは「この正方形の列が五十音表の右上端である」ことですね。これが、解き手が越えなくてはいけない「ハードル」です。
しかし、昔の自分のように「これだけで五十音表の一部と見なすのは初めて見る人からすれば無理がある」という「ストレス」を感じる人がいるかもしれません。実際に五十音表は謎解きの中で比較的単純なモチーフですが、これほど情報の少ない五十音表切り抜き謎がリアル脱出ゲームのSTEP1で出題されているのは見たことがありません。「無理がある」と思うのは、導線がこれだとまだ薄いからです。
ここでそのストレスを軽減させるために、これが五十音表だとハナからわかるような謎にしちゃうのが一つの手です。
さすがにこれだとちょっと簡単すぎるな…というなら、例示を入れて他の位置に入るひらがなを示してこれが五十音表だというヒントを出すのも手ですね。
同じ「きあい」が答えになる50音表切り抜き謎でも、縦に5列入ったのと、「こ」「え」が例示として入ったことでこれが50音表の右端だということがより分かりやすくなり、「こえ」をヒントにして解いてねという制作者の導線が増えたことでストレスを軽減することができます。
これが、制作者の設定した「ハードル」を解き手に乗り越えてもらうため、それ以外の解き手が抱えかねない「ストレス」を極力減らすという作業の一例です。
今回は「謎解きにまだ慣れていない人」のためのストレスを除去する例でしたが、一風変わってるがあまりに説明不足だったり文章がわかりづらくていまいちルールを掴めないパズル…みたいなストレスにたまに自分も出くわします。パズルはああでもないこうでもないと試行錯誤するのが「ハードル」のはずなのに、そもそもルールがよくわからないから手が動かないのは「ストレス」ですよね。
小謎のみならず、中謎でも同じことが言えます。中謎を解くために情報Aに気づかないといけないのであれば、「情報Aを後で使うと前説で司会に最初言わせる」「情報Aの内容が書いてある文章を色字でかなり目立たせる」「情報Aに目を通させるため情報Aを使って解く小謎をあらかじめ前に挟んでおく」などの工夫があれば、「いや気づかねーよ」と解き手に言わせることはできなくなりますし、導線を仕込むだけで謎解きとしての質はグンと上がります。
まとめ
序盤にも書きましたが、導線は制作者がちょうどいいバランスを目指して仕込むものです。わかりやすすぎては謎にならないし、かといって無法なものは独りよがりにしかなりません。どんな「ハードル」を解き手に設けるのか、そしてそれ以外の「ストレス」をいかに排除して解きやすい環境を提供できるか。結局のところゲームによってケースバイケースとしか言いようがないので難しいですね。
だいぶ偉そうなことを書き連ねましたが、自分も世に出したら解き手に予想以上にストレスを与えてしまった経験が何度もあります。思っていたより小謎の法則が解き手に伝わらなかったり、中謎の文章のニュアンスを思っていたように受け取ってもらえずミスリード気味になったり…
なのでやっぱりデバッグって大事。人に一度解いてもらってその反応から推敲を重ねるという作業の重要さを、謎を作る時も、謎を解く時も強く強く最近感じます。
でも自分には大きな問題があってですね、そもそも今回4000字以上もこのことについて長々と書いた理由があるんですが...
交友関係が狭すぎてデバッグを知人に頼んだら完成品遊ぶ人ほとんどいないから友達欲しい
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おわり