7年前に放送された日本テレビドラマ『3年A組 ー今から皆さんは、人質ですー』の最終回、菅田将暉演じる柊一颯の台詞にこんなものがある。
自分の親や友だちに面と向かって言えないことを見ず知らずの他人にぶつけるなよ。お前のストレスの発散で他人の心をえぐるなよ、分かるだろ、俺の言いたいこと、お前らそこまで馬鹿じゃないだろ!
(中略)
右に習って吐いた何気ない一言が、相手を深く傷つけるかもしれない、1人よがりに偏った正義感が束になることでいとも簡単に人の命を奪えるかもしれないってことを。そこにいる君に、これを見ているあなたに!一人ひとりの胸に刻んで欲しいんだよ。他人に同調するより、他人をけなすより、まずは自分を律して磨いて作っていくことの方が大切なんじゃないのか?てかそっちの方が楽しいだろ!?
(中略)
その目も口も手も!誰かを傷つけるためにあるわけじゃない!誰かと喜びを分かち合うために、誰かと幸せを噛みしめるためにあるんじゃないのか!?
劇中のSNS「マインドボイス」の、顔も見えぬユーザー達に向け柊がぶつけた叫びである。
当時この台詞は話題を呼び、マインドボイスのモチーフであろうTwitterでトレンドを席巻していた。感動したという声で溢れていた。
自分は7年前このドラマを見ていて、「賛同できないなあ」と思っていた。
柊の言葉には魂がこもっていた。内容も正論だと思う。
だが、申し訳ないが柊はやや綺麗事に傾きすぎで、性善説に期待しすぎである。
世の中、そんな風にモラルを持ったユーザーでSNSが溢れる事は永劫にない。
そうなるとしたらとっくに過疎ったオワコンSNSである。
SNSが現代人にとって不可欠なものになり、その利用者(=母数)が膨大なものになっていく流れを止められない以上、モラルを持った人口とそれを持たぬ人口は同じ割合で増え続ける。
そんなジャガーノートに対し、声を上げることなど無駄とまでは言わないがもっと別の方法を提案した方が生産的だろう、と7年前の自分はドラマを見ながら思っていた。
柊のこの叫びの原点となった景山澪奈の悲劇はフェイク動画という嘘っぱちで固められた理不尽な炎上が起点であるためそれについては柊の怒りはご尤もなのだが、世の中の全ての炎上に対してそれを言うか?
というか、TL全体を巻き込むレベルの大炎上って真偽が真の場合大体本当にそいつが悪い事が半数超えてないか?と思う。
もうこのご時世、炎上の渦中の人物はその真偽を数日のうちには何かしらの形で明らかにする。
「報道は概ね事実です。」とクロを認めたのち、特に著名人の場合「個人への誹謗・中傷といった行為はご遠慮いただけますと幸いです。」という虫の良い一言が付け加えられていることがやたらに多い。
最後のおまけで法的措置までチラつかせているもんならもはや長谷川亮太かよとため息が出る。
そもそも誹謗中傷喰らいたくないんだったらDM閉鎖すれば良いしリプだってFF以外できないように設定すりゃある程度自衛できんじゃん。
業界のことよく分からんのだがDMって閉鎖すると逆に仕事やりづらいとかあんの?
昔から疑問である。
というか特大のネタ(オカズ、燃料)を投下してしまった以上イジられまくるのは必至な訳で、それに対し「やめてください」とかもはや言わない方がマシであり、黙ってその話題にみんなが飽きるのを待つしかないのである。
だって言いたいじゃん悪口。
一番楽しいじゃん悪口。
自分だって誰かが裏垢と間違え表垢で失言したら少年Tの「おませさんですなぁ笑」のスクショを掘り返したくなるし、野球選手が女性関係でやらかすたびロッテ清田育宏のパズドラDMを掘り返さずにはいられない。
ここで改めて念を押しておくが、自分は全ての誹謗中傷を肯定したいわけではない。
自分が言いたいのは、極上のネタ(オカズ、燃料)が投下されたのに、その人物に「死ね」とか「消えろ」みたいな安直で面白くもなんともない悪口で攻撃するのはダサいし勿体ないぞ、という事である。
せっかくなんだからもっと頭捻って面白い言葉とかやり方でイジってやらないとその人も報われないし、なんならそういう扱い方して面白くなった方が結果ご本人も社会復帰に繋げやすいのではないだろうか。
和田豊が不倫をスッパ抜かれた後、球場で「俺にもチュッしてくれや~」とヤジを飛ばした虎党のセンスは称賛に値した。
昔音ゲーの有名なランカーが電車の無賃乗車でプロ契約を解除され大炎上した際、中国からのゲームファンがその現場の駅にわざわざ出向き「聖地巡礼」と題した動画をbilibiliに上げていてその行動力に唸った。
さきほど長谷川亮太という日本最大級の炎上で知られる男の名前を出した。
とても笑えぬ壮絶な事を数え切れないほど彼もされているが、「地方競馬の協賛レースで彼の書き込みをイジった冠レースを勝手に開催して盛り上がる」という試みは斬新で画期的だと思った。
だいぶ記憶が曖昧な所があるが、昔マツコ・デラックスが怒り新党かどっかで言っていた言葉が印象に残っている。
「2ちゃんねるって昔は悪口でもオシャレな悪口が多かった。今はただただ汚い悪口ばっかり」
2ちゃんねるがただただ汚い悪口で塗れていなかった時期があっただろうかとは思うが、言いたい事は分かる。
まだスマホが普及せずネット人口も限られていた時代、オシャレでセンスを感じさせる切り口の書き込みを確かに多く目にした。
その文化が廃れてしまったとは思わないが、ネット人口の爆発的増加に伴いそれを飲み込み霞ませるほどつまらぬ安直な悪口の濁流が止まらないようになってしまったとは思う。
シャレにならないラインは勿論超えてはいけない。
真偽の分からぬネタに飛びついてはならない。
それを見極められぬ者はセンスがない。
だが一定の、本当に踏み外してはならぬ一線を守った上で遊ぶ悪口にはむしろネットをより豊かに、楽しいものにしてくれるのではないだろうか。
どうせ悪口と誹謗中傷が止むことはない地獄絵図なのだから、まだこの心意気を抱いた地獄絵図の方がほんの少しだけマシではないだろうか。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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