2024卒展謎アーカイブ

武蔵野美術大学映像学科卒業制作展示2024で展示型の謎解きをやってました。

 

 

やる人おんのかなと思いながら、予想以上に食いついてくださる方も多くフラっと入って来てそこから何十分真剣に取り組んでくださる方(しかも1人や2人じゃない)や、お子さんが真剣に取り組む中他の展示も回りたい親御さんに強引に引っ張られる形でイヤイヤ教室を後にするファミリーとかもいました。

 

 

とても嬉しかったです。

 

 

ちなみに講評は持ち時間10分ずーーーーっと教授たちが黙々と謎解いてて殆どコメントもらえず終わりました。(教授たちの分野外すぎて何て言えばいいのかわからなかったのも多分ある)

 

 

ご来場いただいた皆様本当にありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

以下、どんな謎やってたかを公開していきます。

 

 


 

例題1&2

 

「謎をポンと置くだけじゃ普通の人はどう解いて良いかわかんないよ」とゼミの先生(謎解き経験ナシ)から言われ、プロジェクターで映像を映して例題を出題し、それを見てもらうことでまずは考え方を掴んでもらうというアイデアを頂きました。

 

 

実際在廊しながらこの例題映像はめちゃくちゃ効果があったなあとお客さんを見てて思いました。

 

 

一般客向けの謎解き展示をお考えの方(いんのか?)には強くオススメします。

 

www.youtube.com

(展示では例題1と2を分けて2台で投影しました)

 

 


 

A~Hの謎(1st STEP)

 

今回一貫したコンセプトとして、「謎解き知らない人が謎解きおもしれーってなってくれる、興味を持ってくれる入門的なモノ」を目指してます。

 

複雑すぎないことを意識して、自分の過去作を中心に1段階ひらめくことができれば初心者も気持ちよく解けるものを選んで焼き直しています。

 

実際の会場のパネルにはQRコードも貼ってあり、そこで正誤判定やヒントを見ることもできるようにしていました。

 

 

QRコードの先のページ、今でも見れる

https://ryoichikawa.sunnyday.jp/sotuten/A.html

 

Bでみんな詰まってしまったのは予想外。文字を探す作業に予想以上にみんな手間取っていたので、余計な所でストレスを与えたなと反省しています。

 

 

 

 

 

 

Iの謎(1st STEP)

 

この謎は会場でしか解けない謎でした。

 

 

左は、展示でよく見る「この作品は触っていいよ」のマーク。

 

上記の例題の映像でも3分45秒に出てきます。

 

 

 

ということで、一見すべて同じように見えますが、実際にパネルの表面を手で触ってみるとIの謎だけ手触りが違い、けっこうツルツルしていました。(これだけ厚紙加工してる)

 

勇気を出してこのパネルを壁から剝がして裏を見ると、

 

 

 

 

こうなってました。

 

展示でしか出来ない謎として自分ではけっこう気に入ってます。

 

 


 

2nd STEP

 

1st STEPを一問でも正解すると、こんな謎がWEBページ上で出てきます。

 

 

 

と、いうことでここから先はこのブログで追体験できるようにしたいと思います。

 

この2nd STEPで導かれる文章がわかったら、下のリンクのページにそれを入力し、

ぜひそこからALL CLEARまでたどり着いてください。

 

(文章が完成したら深く考えずそのまま入力して下さい)

 

2024卒展謎最終問題 - icchiiiii-blog2’s blog

ストレスのない謎を目指そう

 

 

最近色んな団体の謎解き公演とか、個人の謎解き企画に参加してよく思うことです。自分の中の整理用や戒めにも書いておく。

 

 

 


「導線」とは

 

 

制限時間が迫っているのにとある一つの謎が解けず詰まってしまった時、web謎とかで数十分以上同じ謎が解けず先に進めない時、イライラしますよね。ヒントキットに頼るのなんか変なプライドが邪魔するし。

 

 

自分みたいな端くれが代弁するのもおこがましいですが、こういう時、主に謎を作ったことがある経験がある人の多くは「もし自分が作り手だったらどこに謎を解くカギを隠すだろうか」という考え方をします。しているはず。たぶん。

 

 

この時、「もし自分が作り手だったらどうするだろう」で辿る糸を、謎解きではよく「導線」と呼びます。

 

 

導線とは、一つの謎に対して

①に気づくことができれば(or①をすることで)
②がわかって、
③答えがわかる


という、この①②③の一連の流れのことです。

 

 

 

謎を作る時、制作者には解く人のためにこういった導線をきちんと整備する責任があります。

 

 

導線がないというのは、たとえば何のヒントもなしに「ねえねえ昨日の夕ご飯何食べたと思うー?」と聞いてるようなものです。

聞かれた側からすれば「いや知らねーよ」としか言いようがありません。

問題としてもクソおもんないですね。

 

 

しかし、昨日の夕方その人に「私買い物してじゃがいもと人参と玉ねぎ買ったんだー」というヒントをあらかじめ撒いていたとすれば、これは先述した①を作っていることになるので、問題として成立します。

聞かれた側は「そういえば昨日じゃがいもと人参と玉ねぎ買った話をしていたな」ということを思い出すことができれば、「カレーかな?もしくは肉じゃが?さてまた野菜スープ?」と選択肢を思い浮かべることができます。

 

 

 

……謎解きは基本答えが一つに定まらないとダメなので、これはあくまで日常的な一例にすぎませんが、導線を作るというのは、一つの問題においてそれを解くための道しるべやヒントを設定するということなのです。

 

 

つまり、先ほど言ったわからない謎において導線を辿るというのは、「制作者が設定した謎を解くための隠れた道しるべを探す」という風に言い換えられます。無論この道しるべがあまりにわかりやすすぎると面白くないので、制作者はちょうどいいバランスを攻めます。導線を辿るというのは、犯人の匂いを覚えた警察犬が道を嗅ぎながら逃げた先を追うようなものということです。あれ違うかな?

 

 

主にこの導線を辿ることで解けるのは小謎と中謎です。
最近の謎解き公演において大謎はその導線を踏まえた上で、そこから更に一つ上の発想の転換や逆転、もしくは気づきが求められることが多いと感じます。小謎は一枚謎を沢山解くことで、中謎は警察犬的導線嗅覚を公演にたくさん行くことで鍛えることができると思っていますが…….自分はヒラメキにだいぶ苦手意識があるので、大謎は不得意です。

 


 

「ストレス」が公演の満足度を分ける

 

ちょっと話が逸れたので戻します。
謎が解けないとイライラするよねの話です。

 

大謎が解けない時は、たいてい解き手側の「一つ上の発想の転換や逆転と気づき」が足りていないことが多いです。しかし、小謎や中謎においては解いて先に進めたとしても「ちょっと不親切だなあ」と思うことが正直あります。それはゲームの構成だったり、小謎の画像や紙のデザインだったり、アイテムのUIだったり色々です。

 


そしてその多くは、制作者の導線の設計の甘さにあると個人的には思っています。いわば解く人のヒラメキが足りていないというより、そもそもヒラメかせるための道の道路工事がちゃんとできていない状態。

 

 

これは解く側からすればかなりの「ストレス」です。

 



謎解きとは、そもそも謎に対して解き手が考えてヒラメキでその壁を乗り越えるのが醍醐味のもの。しかし解き手が頭を使って考えるその対象が実は蕪雑な造りをしていて、壁を乗り越えた時の快感が少なければ、それは即ち謎解きの醍醐味そのものの消失を意味します。

 

 

そんな途中の「ストレス」を丸ごと全部吹き飛ばすエッッッグい大謎がその先待っているような革命的な神作であれば話は別ですが、残念ながら全部が全部そういう訳ではありません。主に、「良かったな~!」と「いまいちだったな」を分けるもの、言い換えれば「良作」と「凡作」を分けるものって、ポジティブな要素よりこういった「ストレス」のようなネガティブ要素の少なさで決まるんじゃないかという風に最近思います。

 

 

作り手も毎回100点満点の作品を世に出しているわけではありません。究極の100点満点を追い求めていたらいつまで経っても作品なんて完成しません。

 

そんな限られた時間の中でより品質の高い謎を、より満足度の高い謎を作るには、その公演ならではの面白さといったポジティブ要素を付け足すのも大事ですが、解き手の満足感を下げないよう謎の中の「ストレス」を極力そぎ落とすという作業を怠らないようにするのが物凄く大事だなあと思います。

 

 

謎解きとは違いますが、「暗殺教室」の作者でも知られる松井優征先生が漫画家の世界で非常に近いお話をされている記事があるので参照してみてください。記事の中で先生は「ストレスをそぎ落とす能力」のことを「防御力」とおっしゃっていますね。

 

ジャンプの漫画学校講義録⑥ 作家編 松井優征先生「防御力をつければ勝率も上がる」 - ジャンプの漫画学校 週刊少年ジャンプ・ジャンプSQ.・少年ジャンプ+編集部は、2020年度より、漫画家を対象とした創作講座「ジャンプの漫画学校 jump-manga-school.hatenablog.com  
 


 

「ハードル」と「ストレス」の区別


また謎解きの話に戻ります。

 

間違えてはいけないのが、漫画と違い謎解きはある程度のストレスを与えることを大前提として作るということ。頭を使って考えるというのはそれだけでかなりの労力なのです。でも、その先にあの醍醐味があるんですよね。我々を悩ませた謎というストレスが解けた時のあの快感を、これを読んでいる皆さんは全員ご存じのはずです。



解き手に「頭を使わせる」という相当なコストを支払わせながら、どうやってより質の高い謎解き体験を届けるか。

 

 

ここで最近自分の中でがよくやるのが、「解き手が越えるべきハードル」と「解き手に与えるストレス」を明確に区別して認識するという考え方です。

 

 

どういうことか、一枚謎を実例として説明します。

 

↑図1。雑な画像で申し訳ないけど



はい、謎クラはこれ(図1)だけで3文字の単語の答えを導けますね。

 

答えは「きあい」です。


五十音表の右上端を切り取っているので、当てはまるひらがなが「き」「あ」「い」と分かるからです。

 

しかし、謎解きにまだ触れたばっかりの昔の自分は一番最初にこういった五十音表切り抜き問題を見せられた時まったく解き筋がわからず、解説見ても「いや誰が分かんだよ」と結構イラっとしたのを覚えています。画像に五十音表全体が表示されているのならまだしも、右上端だけって。正方形が幾つか列で並んでるようにしか見えねえしそっから連想できるかよ、と。

 

一般の人からすれば五十音表なんて小1で手放したら次出会うの自分の子供が生まれた時ですからね。もしこれだけで初見ですぐ解けるような人がいたら相当だと思います。流石に今の自分はもう見慣れたので何とも思いませんが…

 

 

さて、この謎を解くために脳内で行われた処理の手順を文章にするとこうです。

 

  1. 正方形の列の外枠が太い、そして左と下には列の続きがあるのに右にはないので五十音表の右端だと気づく(※ハードル)

  2. 矢印が通る順番にその位置に入る五十音表のひらがなを順に読む

  3. 「きあい」と読めることから、それが答えだと分かる

 

この小謎で設定している解き手が気づかなくてはいけないことは「この正方形の列が五十音表の右上端である」ことですね。これが、解き手が越えなくてはいけない「ハードル」です。

 

しかし、昔の自分のように「これだけで五十音表の一部と見なすのは初めて見る人からすれば無理がある」という「ストレス」を感じる人がいるかもしれません。実際に五十音表は謎解きの中で比較的単純なモチーフですが、これほど情報の少ない五十音表切り抜き謎がリアル脱出ゲームのSTEP1で出題されているのは見たことがありません。「無理がある」と思うのは、導線がこれだとまだ薄いからです。

 

ここでそのストレスを軽減させるために、これが五十音表だとハナからわかるような謎にしちゃうのが一つの手です。

↑図2


さすがにこれだとちょっと簡単すぎるな…というなら、例示を入れて他の位置に入るひらがなを示してこれが五十音表だというヒントを出すのも手ですね。

↑図3


同じ「きあい」が答えになる50音表切り抜き謎でも、縦に5列入ったのと、「こ」「え」が例示として入ったことでこれが50音表の右端だということがより分かりやすくなり、「こえ」をヒントにして解いてねという制作者の導線が増えたことでストレスを軽減することができます。

 

 

これが、制作者の設定した「ハードル」を解き手に乗り越えてもらうため、それ以外の解き手が抱えかねない「ストレス」を極力減らすという作業の一例です。

 

今回は「謎解きにまだ慣れていない人」のためのストレスを除去する例でしたが、一風変わってるがあまりに説明不足だったり文章がわかりづらくていまいちルールを掴めないパズル…みたいなストレスにたまに自分も出くわします。パズルはああでもないこうでもないと試行錯誤するのが「ハードル」のはずなのに、そもそもルールがよくわからないから手が動かないのは「ストレス」ですよね。

 

 

小謎のみならず、中謎でも同じことが言えます。中謎を解くために情報Aに気づかないといけないのであれば、「情報Aを後で使うと前説で司会に最初言わせる」「情報Aの内容が書いてある文章を色字でかなり目立たせる」「情報Aに目を通させるため情報Aを使って解く小謎をあらかじめ前に挟んでおく」などの工夫があれば、「いや気づかねーよ」と解き手に言わせることはできなくなりますし、導線を仕込むだけで謎解きとしての質はグンと上がります。

 

 


 

まとめ

 

 

序盤にも書きましたが、導線は制作者がちょうどいいバランスを目指して仕込むものです。わかりやすすぎては謎にならないし、かといって無法なものは独りよがりにしかなりません。どんな「ハードル」を解き手に設けるのか、そしてそれ以外の「ストレス」をいかに排除して解きやすい環境を提供できるか。結局のところゲームによってケースバイケースとしか言いようがないので難しいですね。

 


だいぶ偉そうなことを書き連ねましたが、自分も世に出したら解き手に予想以上にストレスを与えてしまった経験が何度もあります。思っていたより小謎の法則が解き手に伝わらなかったり、中謎の文章のニュアンスを思っていたように受け取ってもらえずミスリード気味になったり…

 

なのでやっぱりデバッグって大事。人に一度解いてもらってその反応から推敲を重ねるという作業の重要さを、謎を作る時も、謎を解く時も強く強く最近感じます。

 


でも自分には大きな問題があってですね、そもそも今回4000字以上もこのことについて長々と書いた理由があるんですが...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交友関係が狭すぎてデバッグを知人に頼んだら完成品遊ぶ人ほとんどいないから友達欲しい

 

 

 

 

 

......................

 

 

 

.................................................

 

 

 

 

....................................................................................

 

 

 

 

 

おわり